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クラウドファンディング開始前に終了へ
2016年3月15日、本日から私が考えた製品をクラウドファンディングで公開!の予定でしたが、プロジェクト開始前に終了してしまいました。
なんと製品のアイデアが、誰もが知っているあの大御所とかぶってしまったのです。
2015年は鯖江うるしアワードでの受賞をきっかけに考え方に変化がありました。
それまではダンボールや紙という素材にこだわったものづくりを考えていましたが、木にも興味を持ったのです。
伝統的な漆器は木地に漆を塗ります。鯖江で木工職人さんの工房などを見学するうちに興味が湧いてきました。
ダンボールや紙は加工の容易さや軽さなどが魅力ですが、木のような強度はありません。
ものづくりの幅を広げるために、木という素材も選択肢に入れようと考えました。
アイデアを形にすべくデザイン開始
2016年からは自分自身で考えた製品を販売していく計画で、2015年はそのために情報収集を行っていました。
紙製品のアイデアは幾つかあり、商品化に動き始めていたものもありましたが、時間がかかりそうでした。
それに対して木製品の方が早く形にできそうだったため、そちらを先に進めることにしました。アイデアの原点になったのは「ワイヤレス・スピーカー」です。
スピーカーは置く場所によって音の聞こえ方が変わります。ワイヤレス・スピーカーは持ち運び自由ですが、室内で設置するには棚や机などの場所が必要。
自宅ではちょうどスピーカーを置きたい場所に棚などがなく、よい方法はないものかと考えていたときに思い付いたのが、押し入れの三脚です。
三脚に板を取り付けたら、ワイヤレス・スピーカーの置き場にできるんじゃないかと考えたのです。
アイデアそのものは2014年から持っていましたが、当時は製品化などは考えておらず、アルミ板にネジ穴でも切ればよいかなぐらいの考えでした。
結局そのときは形にしませんでしたが、再び思い出したのです。
三脚はカメラ好きの多くの人が持っていますが、通常は屋外で使うもので家で使われることはほとんどありません。
そもそも買ったけど最初しか使わずに、その後はずっと収納したままという人も少なくないと思います。
三脚を使う机なら眠っている三脚の有効活用にもなり、中々よいアイデアではないと考えました。
製品として多くの人に使ってもらうため、汎用性を考えると丸テーブルがよいかな?などと考えを膨らませて、CGで形を作りました。
実際に絵にしてみてもよい感じ。すぐに製品化に取り掛かりたいところでしたが、まずは類似品がないかを調べました。
似たようなアイデアがないかをネットで調査
「三脚に板を取り付けて机にする」というアイデアは、まあ誰でも思いつきそうなことではあります。
そう考えて「三脚 机」「tripod table」などのキーワードで検索してみたところ、四角い大きな板を三脚に取り付けて、ノートパソコンの置き場にするという製品がありました。
その製品は三脚に板を取り付けるというアイデアは同じですが、パソコンの落下防止のためにストッパーのようなものが付いており、業務用という感じでした。
私は用途を限定せず、より汎用的に利用できて見た目もスッキリしたものを想定していたので根本的な考え方が違います。
特許庁のデータベースで特許や意匠に関しても検索しましたが、該当しそうなものは見つかりませんでした。
他には類似製品は見当たらず、これなら製品になりそうだと感じました。
それが大きな間違いだったことに、このときは気が付きませんでした。
知り合いの木工職人に試作を依頼
アイデアが形になったところで、知り合いの木工職人に相談しました。
作りたいものを伝え、どんな木材が最適かを教えてもらい、その後に正確な寸法を描いた図を送付。こちらがそのときの図です。
数週間後に試作ができたとの連絡をもらい、送ってもらいました。
届いた丸い板の裏側にネジを取り付けて、三脚に設置した写真がこちら。いい感じ!
愛用のスピーカーを載せたところ。これで好きな場所にスピーカーを置いて使えます。個人的満足度マックスな状態です。
試作品は計4個。サイズ違いで2種類、各サイズに穴を開けたものを作ってもらいました。穴は手で持つためのものです。
室内でも屋外でも手軽に持ち運んで使うことを想定して、持ち手部分に穴を開けました。
穴のないものは「ただの板」という感じで個性がなかったため、結局は穴を開けてもらい、製品のデザインを決定。
また製品としての完成度を高めるために製品名を考え、ロゴをデザインして焼印も作ることにしました。
最初の製品はクラウドファンディングで公開することを決めており、来年はその準備をせねばと考えたのでした。
同じアイデアの製品をほぼ日さんが販売していたことが判明
2015年の大晦日、年越しして2016年が始まったときに、私はネットで恐ろしいものを見つけてしまいました。
なんと自分のアイデアと丸かぶりの製品があったのです。しかもそれを作っていたのは、あの糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」ではありませんか!
ほぼ日のティーテーブル(三脚を使います) – ほぼ日刊イトイ新聞
小鳥たちがエサをついばみに集まるバードテーブルのような、ティーテーブルです。このテーブルは、三脚を使います。脚の部分に三脚を使うテーブルなのです。
よりによってこんな有名どころとかぶるとは…ウェブサイトでは糸井さんが製品について語り、チャットモンチーが触れ、写真雑誌の編集長がオススメしています。
まるですれ違いざまに肩をぶつけてきた相手がマイク・タイソンであったかのような衝撃です。もはや命を守るためには全速力で逃げるしかありません。
でもウェブサイトを隅々まで見ていて、もしかしたら問題ないかもしれないという希望が湧いてきました。
商品はすでに販売が終了しており、特許など権利関係の記載もなかったのです。
気が動転してマイク・タイソンだと思ったけど、実は松崎しげるさんだったのかもしれないと思えました。しげるさんなら話せばわかってくれそうです。
友達にもこのことを話してみたのですが、権利を侵害しなければよいだろうとか、どんな分野にも類似製品はあるものだから問題ないだろうと励ましてくれました。
うん確かにそうだよなと思い直し、準備を進めました。
不安を抱えつつクラウドファンディングの準備を開始
2月になり、マクアケというクラウドファンディングに申し込みました。
Makuake(マクアケ)
サイバーエージェント・クラウドファンディングが手がけるクラウドファンディングの新サービス「Makuake」。夢を持った人達の想いをクラウドファンディングによって実現します。
最初の打ち合わせで担当さんから類似製品について質問されて、ほぼ日さんのティーテーブルのことを伝えました。
その後は製品の写真撮影を行ったり、動画を作成したりしつつ、着々とプロジェクトのページを作成。
リターンを決め、価格を設定し、文章を書き、翌週にはプロジェクト開始という段階まで来たところで担当さんから電話がありました。
ほぼ日さんとアイデアがかぶっていることが、社内で懸念点としてあがったとのこと。
担当さんからは指示などはありませんでしたが、その日のうちにほぼ日さんにメールを送ることにしました。
私自身もずっと気になっていたので、思い切って確認して問題の有無をはっきりさせたいと考えたのです。
ほぼ日への問い合わせ結果を受け、クラウドファンディング中止を決断
ほぼ日さんに問い合わせのメールを送り、今回ブログに書いているような経緯を伝え、製品販売に問題があるかどうかを確認しました。
メールにはすぐに返信がありました。結果は「問題あり」とのこと。ウェブサイトに記載はありませんでしたが、昨年から意匠権を申請されていたのです。
とても丁寧な文面で、私からの問い合わせに好感を持っていただけたようでした。
意匠権は形状、色、模様など主に見た目のデザインに関する権利なので、デザインを変えて回避できるかもしれませんが、アイデアを先に形にしていたのはほぼ日さんですし、無用の争いは避けたいので潔く身を引くことにしました。
ほぼ日さんからいただいた回答を受け、マクアケの担当さんにクラウドファンディングの中止を申し出て、今回のプロジェクトは幕引きとなりました。
特にマクアケさんには多くの時間を使わせてしまって本当に申し訳なかったのですが、担当さんからは温かいお言葉をいただきました。
別のプロジェクトで貢献できるように、また新しいアイデアを考えます。
後日削除するかもしれませんが、クラウドファンディング用に作った動画のリンクを貼っておきます。パスワードは marte_makuake です。
Private Video on Vimeo
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プロジェクト公開直前で中止できたのは不幸中の幸いだった
今回はアイデアがかぶってしまい、またそのことにすぐに気付けなかったことにより、多くの人を巻き込んでしまいました。
しかしながらクラウドファンディング開始直前に問い合わせたことで、ほぼ日さんの権利を侵害せずに済んだことは不幸中の幸いでした。
またマクアケさんにも時間は使わせてしまいましたが、プロジェクトを公開していたら更に迷惑をかけていたことは明らかなので、直前で公開を取りやめられてよかったです。
私自身も多くの時間を費やし、試作や写真撮影などの出費はありましたが、量産前だったので大きな損失は免れました。
クラウドファンディングが中止になってしまったことは非常に残念ですが、準備の過程で様々なことを学びました。そのことはまたブログに書いていきます。
追記:この件で知的財産権の重要さを痛感し、名古屋商工会議所で詳しく聞いてきました。
ものづくりビジネスでは必須となる知的財産権について聞いてきた