「人生フルーツ」は人生の道標になる素晴らしい映画でした

人生フルーツ

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「人生フルーツ」は、愛知県春日井市で暮らす老夫婦を取材したドキュメンタリー。こういう人生の過ごし方こそが、本当の豊かさなんだと感じさせてくれる素晴らしい映画でした。

人生フルーツ 公式サイト

人生フルーツは東海テレビ放送のドキュメンタリー番組

風が吹けば、枯れ葉が落ちる。
枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生フルーツ。

「人生フルーツ」より

樹木希林さんの優しい語りで始まる「人生フルーツ」は、2016年に東海テレビで放送されたドキュメンタリー番組。文化庁芸術祭のテレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞しています。

2016年に私が観た映画の中でもっとも印象に残った「ヤクザと憲法」を手掛けたのも東海テレビ。こちらもテレビ番組として制作されたドキュメンタリーです。「ヤクザと憲法」も「人生フルーツ」もDVD化の予定はなく、映画館でしか観られません。

ヤクザと憲法 2016年に見た映画で最も印象に残ったのは「ヤクザと憲法」

大金を持たずとも幸せに暮らす老夫婦

主役となる津端夫妻は、夫の修一さんが90歳、妻の英子さんが87歳というご高齢。にもかかわらず、2人とも背筋は伸び、毎日、庭の畑を耕し、その恵みをいただきながら生活しています。

修一さんは戦時中は海軍技術士官、終戦後は東京大学第一工学部建築学科で学び、建築家として活躍した後は大学教授を歴任という、ちょっと普通ではない経歴。

士官といえば軍の中ではエリートですが、特別な宿舎に住むのは気が引けるからと、日本に連れて来られた台湾の人達の住まいで一緒に暮らしていたそうで、飾らない人柄が伝わってきます。

妻の英子さんは愛知県半田市で200年続く造り酒屋の一人娘で、修一さんが東大ヨット部に所属していたときに出会い、結婚。

50年ほど前に修一さんがマスタープランを考えた(しかし採用されなかった)愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの近くに土地を買い、家を建て、木や植物を植えました。現在は70種類の野菜と50種類の果実が実るまでになっています。

ご夫婦はいつも笑顔で、修一さんが落ち葉を集めては畑に撒いて土を肥やし、収穫した作物を英子さんが美味しそうな料理にするという生活です。

健康で安らかに暮らしていくためのヒントに満ちた暮らしぶり

老後の不安というのは、誰もが持つものだと思います。特にお金と健康に関することは、大きな課題です。

お金があっても病気になれば辛いし、大病はなくともお金がなければ先行きが不安になります。

津端夫妻は劇中で毎月30万円ほどの年金をもらっているとのことでした。これだけもらえれば十分とか、自分の老後にはそんなにもらえないという声も聞こえてきそうですが、ポイントはそこではなく「農」が生活の中にあるということです。

田畑を耕すことで得られるのは食物だけではありません。1日中、畑に水や枯れ葉を撒いたり、雑草を抜いたり、野菜や果実を収穫したりすることで、体の中の細かな筋肉が使われ、視覚、触覚、嗅覚、聴覚の刺激にもなるのです。

英子さんはコンビニでは買い物をしない主義だそうで、映画の中では馴染みのお店で肉や魚、足りない野菜などを購入していました。料理は主食からデザートに至るまですべて手作りで、野菜の多くは庭で収穫しており、外食もしないとのこと。

スーパーでは食材、コンビニではお菓子などを買い、外食を楽しみ、体重が増えないように、血圧を下げるようにとスポーツジムで運動というのが現代的な暮らしぶりではないかと思いますが、このような生活は、大きな歪みを、大きな力で補正するような無理を感じます。

コンビニでは添加物を使っていない食品を探すのは難しいし、短時間で大きなエネルギーを消費する運動は体への負担が小さくありません。

津端夫妻の暮らしでは常に体を動かしていて、器具を使った運動や長時間の歩行などを行わなくとも、十分な運動効果が得られていることがわかります。多くの食材を自身で育てており、食生活も豊かです。

家を建てて、その周囲に木を植えたり、畑を作ったりしたのが50年前ということは、修一さんが40歳の頃には、今のような生活を始めたということになります。

定年ぐらいの年齢までは働いていたと思いますが、農が軸になり、バランスのよい生活を続けてこられたのではないかと感じました。

1日平均8時間の睡眠で1週間を過ごしたとして、毎日同じ時間に寝起きをするのと、3日間まったく寝ないで残りの数日でまとめて睡眠をとるのでは、体への負担の大きさがまったく違うことは簡単に想像できると思います。

前者は津端夫妻、後者は多くの現代人の暮らし方です。どちらが健やかな老後を過ごせるでしょうか。

以前ブログに書きましたが、私は長生きしたいわけではありません。ただ「不幸で辛い老後」は嫌なので、津端夫妻に近い生活をしているし、まだお二人には及ばないところは、徐々に近付けていきたいなと思います。どう生きるかは自分次第です。

津端夫妻、そして英子さんは本を書かれています。絶版もあるようですが、入手できれば中古本でもよいので1冊ずつ購入していこうと思います。

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人生フルーツは劇場公開から1年ほど経ったいまも、全国で上映されています。興味のある人は公式サイトを覗いてみてください。得るものが大きいと思いますよ。

人生フルーツ 公式サイト