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Lytro(ライトロ)が新たに発表した「Lytro Cinema」は、なんとグリーンバックなしで撮影した映像から任意の対象を切り抜いたり(キーイング)、マッチムーブ用のカメラデータが取り出せるという脅威の製品です。
個人的には、Googleがレンダーファームを始めるというニュース以来の衝撃!
Lytro(ライトロ)とは
Lytroは特殊なカメラを開発・販売する企業です。企業名がそのままブランド名にもなっています。
一番最初に発表した製品は、撮影後に焦点(ピント)が合わせられるカメラでした。
写真を撮影した後でピントが合っていなかったという経験は誰にでもあると思いますが、LytroのCameraを使えば、後から焦点合わせができるので、ピンぼけの心配がなくなります。
初代の製品は細長く、カメラっぽくない形のものでした。(写真はWikipediaから引用)
でも新型はメチャメチャかっこいい!後から焦点合わせという機能を実現するために、前後方向に長くなってしまうのは避けられないようですが、魅力的なデザインに仕上げていますね。
グリーンバックなしでキーイング可能なLytro Cinema
Lytroがこれまで販売していたカメラは静止画撮影専用でした。
新たに発表されたLytro Cinemaは動画撮影用で、映画・映像業界向け製品です。
Lytro Cinema
Lytro Cinema captures all the rays of light within a scene, providing a rich amount of Light Field data. Every pixel has color properties, directional properties, and its exact placement in space. Lytro Cinema is defying the traditional physics of on set capture by virtualizing creative camera decisions.
Lytro Cinemaがすごいのは、普通に撮影しただけでシーン内のあらゆる光線情報が記録できるところ。
具体的には次のようなことが可能になります。
- 焦点距離や被写界深度、シャッター速度などの変更
- グリーンバックなしでキーイング
- モーションブラーの追加
- マッチムーブ用のカメラデータ取得
焦点合わせが自由にできるのは、静止画用のLytroカメラと同じです。
従来のカメラでは撮影時に焦点合わせが必要になりますが、Lytro Cinemaなら後から自由に変えられます。
このように焦点がはっきりとしない映像でも…
撮影後に焦点位置や被写界深度が変更できます。
映画などでは画面の奥に合わせていた焦点が、画面手前に変わる「ピン送り」という手法が使われることがあります。
ピン送りって結構難しそうだし、演出の都合で焦点位置を後から変更したくなることもあるかもしれません。そんなときには重宝しそうですね。
しかしLytro Cinemaの実力はこんなものではありません。なんとグリーンバックなしでキーイング(抜き)ができてしまいます。マジか!
こちらの映像を見てもらうと、どういうことがかわかります。普通に撮影した映像で人物だけが綺麗に抜けており、背景が差し替えられています。スゲー!
追記:動画が削除されていたのでリンクを解除しました。
現状このようなキーイングを行うためにはグリーンバック撮影が一般的です。
以前ハリウッドの映画やドラマで合成が多用されていることを書きましたが、シーンによってはスタジオ全体をグリーンバックにして大掛かりな撮影が行われます。
グリーンバック撮影をしても、うまく抜けない箇所が出てくるので手作業も必要です。
デモを見る限りでは、Lytro Cinemaならそんな微調整も不要になりそうです。
撮影時に取得する深度情報を元にマスク処理するようですが、グリーンバックなしで髪の毛とかも非常に綺麗に抜けていてすごすぎ。
さらに度肝を抜かれるのは、モーションブラーを後付けしたり、マッチムーブ用のカメラデータも取得できるという点。
モーションブラーがあまりかかっていないビリヤードの球ですが…
後付けでこんな感じにブラーがかかっています。
次のデモ動画の左下をみると、撮影している映像のカメラデータがリアルタイムに取得されている様子がわかります。
追記:動画が削除されていたのでリンクを解除しました。
現在はマッチムーブのために2Dの映像からこのようなカメラデータを取り出していますが、Lytro Cinemaなら撮影と同時にデータが取得できます。
マッチムーブ専門のアーティストなどにとっては、脅威となるんじゃないでしょうかね。
上の映像では男女のキスシーンに撮影機材やハシゴを運ぶスタッフなど邪魔なものがゴチャゴチャに写り込んでいます。
通常はキーイングするためにグリーンバックにして、スタッフが入り込まないようにして撮影しますが、Lytro Cinemaを使えば、こんな映像からでも必要な情報だけを抜いて合成できそうです。
膨大なデータ量も問題なく記録できるようになっているそうです。
Lytro Cinemaはカメラ本体やストレージなどのハードウェア、プラグインなどのソフトウェアとセットでのレンタルで、12万5,000ドルからだそうです。(Engadget日本語版からの情報)
映画・映像業界向けの製品ですが、個人や小規模事業者でも導入できる価格帯でこのような製品が提供されるようになると、合成を使ったおもしろい映像をより多くの人が簡単に作れるようになりそう。
ますます技術力ではなく、創造力が問われそうです。
以下のメディアでは、もう少し詳しい情報を日本語で紹介しています。ご参考まで。
40K映像を毎秒300フレーム撮影しグリーンバック不要のカメラ「Lytro Cinema」は映像業界に革命をもたらす潜在能力を秘めたデバイス -Gigazine
7億画素の「40K」カメラLytro Cinema発表。後から再合焦や3D合成を実現するライトフィールド・シネマカメラ -Engadget日本語版
755メガピクセル可変焦点のLytro Cinemaカメラは映画撮影からグリーンスクリーンを追放する -TechCrunch Japan