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以前、参加報告をした鯖江うるしアワード2015ですが、プロダクト部門最優秀賞を受賞しました!
このような素晴らしい賞をいただいて、とても嬉しいです。
Table of Contents
改めて鯖江うるしアワード2015とは
「鯖江うるしアワード」は、福井県鯖江市・越前漆器協同組合が主催のコンペです。
主管は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、協賛にはインタービジネスブリッジ合同会社、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング、株式会社GLOBAL WORKS、ローランド ディー.ジー.株式会社が名を連ねています。
さらにメディアパートナーとして、コロカル(株式会社マガジンハウス)、先頃Creation of the Weekにも選出していただいたポートフォリオサイト運営なども手がける株式会社ロフトワークという布陣で、主催側の力の入れ方が伝わってきます。
今回は「うるしのある生活」をテーマに、食器、家具、文具、サービスなど姿・カタチを問わず、多くの人の生活を豊かに、そして美しくする「うるし」の姿を募集するという内容で、プロ・アマや法人・個人を問わず、誰もが参加できるものとなっていました。
詳しくは、鯖江うるしアワード2015公式ページをご覧ください。
鯖江うるしアワード2015公式ページ。
追記:公式ページが閲覧できなくなっていた(Not Found)ため、リンクを削除しました。
コーヒータンブラーを思い付いた過程
「うるしのある生活」というテーマを聞いて思い付いたのは「コーヒー」でした。
漆器には高級品・工芸品というイメージがあり、日常生活とは縁遠い感じがあります。
このような漆器を日常に溶け込ませるためには普段から多くの人が使えるものにするべきだと考え、その答えとしてコーヒーが浮かびました。
日本にはコーヒーが好きな人が多く、全国各地に喫茶店やコーヒーショップが存在しますし、世界中で飲まれています。
漆器でコーヒー用に何かが作れれば、世界中で漆器を使ってもらうきっかけとなるのではないかという発想で私が考えたのは「タンブラー」でした。
私自身が本当にコーヒー好きで、会社員のときには近所のコーヒーショップにタンブラーを持って足繁く通い、美味しいホットコーヒーを注いでもらっていました。
タンブラーを愛用する理由は、コーヒーを飲み終えるたびに紙コップを捨てるのは勿体無い、タンブラーをコーヒーショップに持ち込むと値引きしてくれる、もっと美味しくコーヒーを飲みたいなど様々なことが考えられます。
理由は違ってもタンブラーを使っていることに変わりはありません。
ならばもっとコーヒーが美味しく飲めるタンブラーがあったら、いま利用している人達は少なからず興味があるはずです。
伝統的な漆器は湯呑みや汁椀としても使われていることからもわかるように温かい飲み物や食べ物を入れたときに口当たりが良く、保温性に優れているという利点があります。
しかし、ネットで調べても漆器のコーヒーカップは多くありますが、タンブラーは樹脂やステンレス製のものしか見つからず、漆器のタンブラーには新規性もあると確信しました。
デザインの元になったのは「棗(なつめ)」
デザインする上で着想を得たのは茶器である「棗(なつめ)」です。
棗は抹茶を入れておくための容器ですが、過去に知人宅で見せてもらったことがありました。
茶道愛好家だった知人の父親から漆器である棗は手の脂によって光沢が増し、使い込むほどに美しくなると教えてもらい感銘を受け、強い印象が残っていたのです。
「使い込む=劣化」ではなく、使い始めたときよりも美しさが増すなんて漆器とはなんと素晴らしいものだと深く記憶に刻まれ、以来、「漆器=棗」というぐらい、このときのことは印象に残っています。
棗をモチーフにして世界中で飲まれているコーヒーの容器をデザインするということが、日本の伝統が息づく茶道と世界で愛されているコーヒーとをつなぐ面白さも感じつつ、タンブラーのデザインを考えました。
私がデザインした「なつめタンブラー」の形は次のよう真ん中で二分割でき、内蓋にはゴムパッキンを付けてコーヒーが漏れるのを防止します。
上蓋はひっくり返すとカップにもなるので、こちらにコーヒーを注いでも良いし、タンブラー本体から直接飲むこともできます。
デザインにはMODOというCGソフトを使っています。
MODO JAPAN GROUP
MODOはダンボールアートの設計図を作るときにも利用していますが、頭の中に浮かんだイメージを直感的に素早く形にでき、簡単な設定で美しい絵作り(レンダリング)ができるので重宝しています。
売れるものを作らなくてはいけないという強い思い
コーヒー用のタンブラーというアイデアの根底にあったのは「製品化したときに本当に売れるものでなくてはいけない」ということでした。
皆が買ってくれるからこそ多くの人が漆器を知る機会が増え、その素晴らしさが周りの人達に伝わってさらに需要が増え、産業の活性化につながるはずだからです。
私が主眼においたのは「鯖江のうるし産業を活気づける」という点だったため、売れるものを考えることが一番重要でした。
タンブラーが製品化されて市場に出ていたときに自分自身が本当に欲しいと思えるデザインにしました。
プロも参加するコンペで受賞できた喜び
お伝えしているとおり、鯖江うるしアワードは多くの企業が協賛し、コンペについて広く知らせるためにメディアパートナーを擁するという力の入ったものでした。
審査員の皆様も次の通り、錚々たる顔ぶれ。
- 鯖江市 市長 牧野 百男
- 越前漆器協同組合 理事長 土田 直
- 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授 岸 博幸
- 株式会社マガジンハウス コロカル編集長 及川 卓也
- NOSIGNER INC. 代表 太刀川 英輔
- 株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング 取締役 坊垣 佳奈
(順不同・敬称略)
公式発表によると、コンペには147作品の応募がありました。
通常、このようなアワードで期待される作品数は50~100程度だそうで、その予想を大きく上回る結果とのことでした。
審査は1次審査(書類選考)、2次審査(最終審査)があり、審査部門にはプロダクト部門、アイデア部門、一般投票部門、協賛部門がありました。
大賞は逃しましたが、プロ・アマ問わず多くの作品が集まった中でプロダクト部門最優秀賞という名誉ある賞をいただけたことは大変光栄なことでした。
受賞は新たなる挑戦のはじまり
授賞式で鯖江うるしアワードの主管という重責を担っていらっしゃる慶応大学大学院教授の岸さんも仰っていましたが、この受賞で終わりというのでは無く、むしろここからが始まりになります。
受賞作品には商品化の機会が提供されて、これから商品化に向けての具体的な取り組みが始まるからです。
実際にどのように進めていくかはわかりませんが(恐らく主催側も手探りな部分があるんじゃないかと思います)、作り手の人達と協議しながら試作を行うことになると思います。
資金集めに関しては審査員の一人である坊垣さんの会社、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営しているクラウドファンディングサービスMakuakeにも支援していただけることになっています。
Makuake(マクアケ)
また、広報・宣伝の面では主催側が引き続き支援してくれるでしょう。
このような強力な支援体制があるのでとても有利な条件と言えます(プレッシャーがかかるとも言えるけどw)。
昨年末に会社を退職しており取り組みやすい状況ですし、他の受賞者が東京や関西在住だったのに対して私だけが福井県のお隣である岐阜県在住なので(とはいえ、かなり遠いんですがw)、偶然ですが地理的な条件も恵まれています。
関係者の皆様の期待に応えられるよう尽力します。
受賞によって得られたお金には代えられないもの
鯖江うるしアワードで受賞したことによって得た一番大きなことは、新たな人達とのつながりが生まれたことです。
審査員や協賛企業、受賞者、鯖江市のうるし職人など、様々な立場や年齢、地域の皆さんと知り合うことができました。
このような機会は鯖江うるしアワードに参加し、結果を残せたから得られたものであり、金銭には代えられない価値があります。
ここからさらに皆さんとの関係を発展させられるように、なつめタンブラー商品化実現に向けて取り組んでいきます。
これからの活動は引き続きブログでも報告していきますので、暖かく見守っていただければ幸いです!