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日本のバブル絶頂期という時代が生んだ映画「ライジング・サン」
時代が生んだ映画というものがある。ベトナム戦争の後では、「地獄の黙示録」「プラトーン」「グッドモーニング・ベトナム」など、その戦争を題材とした多くの映画が発表された。
「ライジング・サン」は1990年代の前半という、日本がバブル絶頂期にあった時代に生まれた映画。このときの日本や日本人が、アメリカ人からどのように見えていたのかを知るうえでも非常に興味深い。
脚本はマイケル・クライトン。映画「ジュラシック・パーク」の脚本を書いたことでも有名だ。
映画の舞台はアメリカのLAに日本企業によって建てられたナカモトビル。
ここで発生した高級娼婦の殺人事件を巡り、日本通の刑事役のショーン・コネリーと若手刑事役のウェズリー・スナイプスとがタッグを組んで事件の解明に挑むこととなる。
日本人役の俳優やショーン・コネリーの日本語が辿々しかったり、芸者のような出で立ちの女性がパーティーにいたりと、ハリウッド映画にありがちな「変な日本人」がこの映画にも登場する。
しかしそんなことはどうでも良く思えるほど、日本のことを非常に良く研究したと思わせる設定ややりとりに感心する。
例えば、年齢の違うもの同志には先輩・後輩という関係性が生まれるということ、企業とヤクザとの関係、異常なほど高い犯罪検挙率など、日本のことを良く調べていることがわかる。
細かなところでは、間違っている箇所もあるが、重要なのは、「相手が自分をどのように見ているのか」ということだろう。
近年、中国人が日本の土地を買い漁っていて、中国が日本を乗っ取ろうとしているのではないかなどというニュースもあった。
しかし日本がバブル絶頂だった頃、日本人もアメリカに土地を買い、ビルを建て、美術品を買い漁り、企業買収を行い、車や家電などをどんどんと輸出していた。
アメリカ人にしてみれば、日本がアメリカを乗っ取るのではないかという脅威を感じていただろう。
映画で重要な役割を果たすエディ・サカムラ役の日系人俳優、ケイリー・ヒロユキ・タガワの”Business is War”という台詞がある。
バブル当時、”Economic Animal”と揶揄された日本人の異常なまでの働き方が、この一言に集約されている。
プライベートを重んじる欧米人にとっては、なぜ自分を捨ててまで企業のために一心不乱に働くのか理解に苦しむだろう。
残念ながらこのような日本人の体質はバブルの頃から変わっていない。
最近では過剰労働を強いる、いわゆる「ブラック企業」が問題視されている。
だが、このような企業が存在しうるのは、そこで働く人間がいるからである。そして、無理な働き方をして、最悪の場合には、自殺したり、病気になったりするのだ。
日本が戦後の焼け野原から戦勝国の脅威になるほどまでに目覚ましい復興を遂げたのは一心不乱に働いてきた世代のお陰だ。
だがそろそろ色々なことを見直すときが来ている。
映画では日本の技術力の高さ、文化的背景、問題のある企業体質などをうまくストーリーに落とし込んでいて、最後まで非常に楽しめるものとなっている。
毎年、何千本もの映画が新しく作られているが、たまにはこのような時代が生んだ作品を当時の時代背景を考えながら見てみるのも良いだろう。